【監修:青山健一】
目 次
上の前歯が出ている状態は、一般的に「出っ歯」と呼ばれます。
出っ歯には健康面でのデメリットも多くありますが、やはり一番の問題は歯が飛び出た口元にコンプレックスを抱いてしまうことです。
また歯は唇と密に接触しているため、出っ歯は唇の美しさにも大きく影響します。
俗にいう「たらこ唇」や、乾燥してひび割れた唇などは、出っ歯がその原因となっているケースが少なくありません。
ここでは、出っ歯が与える唇への影響について解説していきます。
出っ歯と唇の関係
出っ歯は正式には「上顎前突症」と呼ばれる不正咬合の一種です。
上顎の前歯が下顎の前歯よりも4mm以上前に出ている場合は出っ歯と診断されます。
出っ歯は見た目だけの問題ではなく、噛み合わせが悪くなることによる健康面でのリスクも少なくありません。
- 虫歯や歯周病のリスクが高い
- 咀嚼力が弱まる恐れがある
- 顎関節症になりやすい
- 全身のバランスが悪くなる
体の中でも歯に直接触れる唇は出っ歯の影響を受けやすい部位です。
唇が前方に出ている「たらこ唇」は遺伝などで先天的に唇が分厚い場合もありますが、出っ歯が原因となっているケースも見受けられます。
また、転倒などによって顔面を強打したときに、出っ歯が唇を傷つけてしまう危険性もあります。
出っ歯が唇に与える影響
唇は常に歯に接しているため、出っ歯などの歯並びの影響をダイレクトに受けてしまいがちです。
唇が乾燥してすぐに切れてしまう場合も出っ歯が原因ということが考えられます。
唇の形が悪いという悩みも歯列矯正をすることで解消できるかもしれません。
口をきちんと閉じられないことによる唇のトラブルや、唇の見た目でのデメリットなど、出っ歯が唇に与える影響について解説します。
唇が突出して見える
顔を横から見たときに、鼻先と顎の最も突き出た部分を結んだラインのことをEライン(エステティックライン)と呼んでいます。
アメリカの矯正歯科医ロバート・ケリッツによって提唱されたEラインは、横顔の美しさの基準とされることが多く、唇がEラインの内側またはライン上にあることが美しい顔であると定義されています。
前歯が出ている状態の出っ歯では唇がこのEラインの外側に出てしまうため、定義の上では美しい横顔とは見なされません。
口を閉じられない
前歯が出ている状態の出っ歯では、唇がきちんと閉じにくくなってしまいます。
唇が完全に閉じないと唾液が付着せず、特に冬などは唇が乾燥しやすくなります。唇が切れてしまいやすくなるため注意が必要です。
また口が閉じられないと前歯の歯茎も乾燥しやすくなるため、唾液の抗菌作用が低下してしまいます。
歯周病の原因となる細菌が増えやすい状態になり、前歯の歯茎から歯周病が進行することも少なくありません。
出っ歯の人は歯並びが悪いことも多く、磨き残しと乾燥の影響で虫歯のリスクも増えてしまうのです。
分厚い唇
上の前歯が前方に傾いている出っ歯は、唇が分厚い「たらこ唇」の原因になります。
通常であれば唇の裏側にあって表に見えない部分が、前歯に押し出されて露出しやすくなり、唇がふくらんで分厚く見えてしまうのです。
また出っ歯だけではなく、ねじれて生えた歯や八重歯なども歯並びの悪さから唇の形に影響します。
出っ歯をはじめ、歯の状態が原因で分厚くなっている唇の改善には、歯科医院での矯正治療が必要となります。
出っ歯の主な原因
出っ歯の原因は、骨格による先天的な要因と生活習慣による後天的な要因に大きく分けられます。
骨格は両親や祖父母の遺伝を受けるため、先天的な出っ歯を予防することはできません。
対して生活習慣による後天的な出っ歯は、日々の習慣や癖などの原因に注意すれば防げます。
大人になってから出っ歯を矯正するのは労力やコストの面で大変です。顎の骨が固まっていない成長期のうちに、出っ歯になる原因をしっかり理解して対策しておきましょう。
遺伝
出っ歯には両親からの遺伝が原因というケースもあります。両親や祖父母が出っ歯である場合、出っ歯になりやすい骨格が遺伝することが多いのです。
下記のような骨格的な特徴は、遺伝による出っ歯が考えられます。
- 前歯が前方に位置している
- 上下の顎の骨のバランスが悪い
遺伝による骨格が原因となっている出っ歯の矯正は、歯科医院での矯正治療で歯並びを整える必要があります。
口呼吸
空気を直接口から肺に吸入する口呼吸は体への負荷が掛かる呼吸法であり、さまざまなデメリットがあります。
- 細菌やウイルスなどの感染リスクの上昇
- 口内細菌の繁殖による虫歯や歯周病の増加
- 口の中が乾燥することによる口臭の悪化
- 睡眠障害や慢性疲労など
実は出っ歯も口呼吸のデメリットの1つです。幼少時から口呼吸をしていると出っ歯になる可能性が高くなります。
歯並びを決めるのは、舌の圧力と頬の筋肉や唇のまわりの筋肉のバランスです。
しかし、口呼吸をしていると唇や頬の筋肉が緩んでそのバランスが崩れ、舌の圧力が強くなります。
舌が前歯を押し出す力が強まると常に歯に圧力がかかる状態になり、その結果前歯が傾いて出っ歯になるのです。
また口呼吸をすると口を開く時間が長くなり、唇が歯を押さえつける力が弱まるため、これも出っ歯の一因となってしまいます。
舌癖
舌癖とは文字通り「舌の悪い癖」のことで、舌を使わないときに不必要に舌が動く癖などを指します。
食事や会話などの場合以外は、舌はスポットと呼ばれる上顎の正しい位置にあるのが正常です。
しかし、舌が上顎のスポットではなく下顎の方にある人がいます。この「低舌位」という状態も舌癖の一種です。
舌の力はみなさんが思っているよりも強いため、舌癖によって常に歯に負荷がかかる状態は出っ歯の原因になります。
唇や爪を噛む癖
幼稚園や小学校低学年など、顎の骨の成長期に唇や爪を噛む癖があると出っ歯の原因になります。
特に下唇を噛む癖があると上の前歯が前方に倒れる状態になり、あわせて下の前歯が内側に倒れるため出っ歯になりやすいのです。
唇を噛むのと同様に、爪を噛む癖も出っ歯の原因になるため、幼少時のうちにこれらの癖はやめさせるようにしましょう。
指しゃぶり
指しゃぶりは赤ちゃんの成長には欠かせない行為ですが、3歳頃になっても指しゃぶりを続けている場合は注意が必要です。
指しゃぶりをすると頬の筋肉が強く働くため、舌の圧力と口まわりの筋肉のバランスが崩れて歯並びが悪くなる原因になります。
指しゃぶりでは上の前歯の下に指を置いて吸うため、必然的に前歯が傾きやすくなるのです。
唇が突出して見えるのは出っ歯だけではない?
出っ歯の状態ではなくキレイな歯並びなのに、上下の唇全体が前方に突き出ているようにモッコリと盛り上がっている人がいます。
唇が突き出して口全体が前に飛び出て見えることを、「口ゴボ」といいます。
上の前歯が出っ歯のケースでも口ゴボになることはありますが、頭蓋骨に対して上下の顎の骨そのものが前方に出ているケースで多く見られます。
つまり、口ゴボの原因には遺伝的な影響が大きいのです。
横顔でわかる程度の口ゴボではなく、前から見ても唇が出ていることがわかるケースは美容的にも問題があり、コンプレックスの原因になります。
口ゴボを根本的に治すのは自力では不可能なため歯科医による治療が必要です。お悩みの方は下記の「無料相談」をご利用してみてください。
出っ歯による唇の悩みを解消する方法
唇にとって悪影響の多い出っ歯を治すにはいくつか方法があり、どの治療法を選ぶかは歯科専門医と話し合った上で決定します。
顎が発達の途中にある成長期や上顎前突が軽度のケースでは、リップトレーニングや口腔筋機能療法といった自宅で継続する訓練が有効です。
それ以外の出っ歯の矯正には歯列矯正を選択することになります。
リップトレーニング
出っ歯の人が唇を閉じようとすると下顎の先端に梅干しのようなシワができることがあり、見た目にもあまり美しくありません。
唇を閉じるときに、歯が出ていると唇がそれだけ遠回りしなければならなくなります。
その結果、下唇と顎の先端にかけての部分にある「オトガイ筋」が過剰に引っ張られて、下顎の先端にシワが出来てしまうのです。
オトガイ緊張という梅干しジワの改善には、オトガイ筋ではなく口輪筋を使うリップトレーニングが有効な場合があります。
- 割り箸などを上下の唇の間にはさんで口を閉じる
- 唇と頬の筋肉を意識的に使って風船をふくらませる
リップトレーニングで口輪筋の筋肉をつけ、舌・唇・頬の筋肉などのバランスを整えていくと、梅干しジワが出来なくなっていきます。
ただし、極端な出っ歯の場合は口輪筋だけで唇を閉じられないため、リップトレーニングをしてもほとんど効果はありません。
口腔筋機能療法
先に解説した舌癖を治すトレーニングとして口腔筋機能療法があります。
舌や頬などの口まわりの筋肉を鍛えて舌の位置を正しくすることにより、歯並びや咬合を整えていくトレーニングです。
顎の成長が終わった大人では効果が期待できませんが、子どもの出っ歯などの矯正治療と並行して指導されることが多い方法です。
口腔筋機能療法には何十種類ものトレーニングがあり、歯科医院では症状に合わせたトレーニングを組み合わせて正しいやり方を指導します。
歯列矯正
出っ歯の歯列矯正では、歯にワイヤーやマウスピースなどの装置を取り付け、時間をかけて歯を移動させることで歯並びや噛み合わせを矯正していきます。
矯正が終了するまでの期間が長く、最初のうちは装置に慣れずに痛みや違和感を覚えることもありますが、年齢を問わずに治療が可能です。
骨格そのものに問題があるケースは外科的な処置が必要ですが、それ以外の出っ歯の治療では歯列矯正がよく選択されます。
歯列矯正で出っ歯を治す方法
歯列矯正の方法としては、ワイヤーを使用するブラケット矯正と、マウスピース矯正に大きく分かれます。
症状や治療方針、患者さまのニーズなどを考慮して、この2種類の矯正方法から選択します。
ブラケット矯正はワイヤーを通して歯をゆっくり動かす治療法で、矯正が必要なほとんどの症状への対応が可能です。
マウスピース矯正は自分の歯型に合ったプラスチック製のマウスピースを装着する治療法で、ワイヤーが見えるのが嫌だと思っている患者さんに用いられます。
どちらの場合も、出ている上の前歯を後ろに引っ込めるためのスペースが必要な場合は抜歯や歯を削るといった処置が行われます。
出っ歯による唇の悩みは歯科医に相談しよう
形の良い唇から整った歯並びが見える笑顔は多くの人の憧れです。
一方前歯が原因で、唇がぽってりと厚い・唇が乾燥して切れやすいなどといった悩みを抱えている方は少なくありません。
これらを解消する方法として歯列矯正があります。大人になってからの歯列矯正は決して遅くはありません。
出っ歯による唇の悩みがある人は、ぜひ歯科医院でカウンセリングを受けてみましょう。下記の無料相談を利用するのもおすすめです。
まとめ
出っ歯はコンプレックスを感じる要因となるものです。歯が出ていると唇に与える影響も大きく、美容面だけではなく健康面での問題も発生しやすくなります。
出っ歯は遺伝が原因というケースもありますが、癖や習慣などが原因になっていることも多く、その原因を理解しておけば出っ歯を予防できます。
出っ歯の影響で唇にもコンプレックスを抱いているような人には矯正治療がおすすめです。
歯列矯正で歯並びを整えて、形の良い唇と美しい横顔を手に入れましょう。