子供の矯正治療に急速拡大装置を使用するデメリットは?メリットや注意点もご紹介します

【監修:青山健一】

子供の矯正治療に急速拡大装置を使用するデメリットは?メリットや注意点もご紹介します

子供の矯正治療に急速拡大装置を使用するデメリットを知っておくことは、矯正治療を開始する際の判断基準をもつために重要です。
急速拡大装置は、名前の通り短期間で効果が得られる装置でもあるため、効果も認められており昔から使われていました。

しかしトラブルも起こっているため、子供の矯正治療における急速拡大装置の知識を身につけ、可能な限りのリスクを回避しましょう。
ここでは、急速拡大装置を矯正方法として使う際のメリットや注意点もご紹介します。

急速拡大装置の概要

急速拡大装置の概要

急速拡大装置とは、子供の成長途中で使う事で短期間で効果を挙げられる事で知られている矯正器具です。
急速拡大装置の材料は、金属でできており上顎に装着します。この器具は数10キロもの力に耐えられる性質でなければいけません。

左右の奥歯に固定する「バンド」と呼ばれる金属の輪、バンドにつながる太いワイヤーの先には金属製の板と調整するネジという構造です。

ネジは手動で回す事が可能で、歯科医のアドバイスに基づき装置を拡大するのは患者様です。小さなピンを使って約90度回転させると0.2mmほど装置が拡大します。

このネジを回すことで徐々に矯正拡大装置のワイヤーが外側に広がり、上顎の骨に隙間が作られます。
隙間には新しい骨が生成され、やがて上顎骨は一枚に固定されていくという性質を利用した治療法です。

急速拡大装置を使用した治療方法とは

急速拡大装置を使用した治療方法とは

矯正治療では、歯の移動を行う矯正方法の他に、顎の骨を成長に合わせて拡大させる方法があります。
その方法には2種類あり、「急速拡大法(きゅうそくかくだいほう)」と「緩徐拡大法(かんじょかくだいほう)」です。

緩徐拡大法の治療が1年から2年程度かけて顎の骨の拡大を行うのに比べ、急速拡大法は約3ヵ月、長くても6ヵ月間の期間で治療します。
急速拡大装置は、この急速拡大法で使われる矯正器具です。
何らかの理由で顎の横幅がVの字のように狭かった状態を、U字の歯列弓に矯正し、永久歯のスペースが確保できます。

主な目的

急速拡大装置を使う主な目的は、歯列の凹凸を改善するために用います。
なぜ歯列の悪さを改善するために、顎の骨を拡大するかというと、骨の構成がポイントだからです。
歯には歯根という歯肉に隠れた部分があり、歯根は歯槽骨に支えられています。

歯槽骨は顎の骨の一部のため、急速拡大装置で上顎が拡大し、歯槽骨がそれに伴って移動するという仕組みです。
スペースが確保された歯は自然に綺麗に並ぶため、歯全体を傾斜させずに移動する事ができます。

対応できる症例

急速拡大装置で対応できる症例は、主に上顎が小さすぎる事で起こる問題を改善します。
具体的には、出っ歯や交叉咬合などの不正咬合に適用する事が多いです。
対応可能な症例はいくつかありますが、注意するべき点は患者様の顎骨が成長途中でなくてはいけません。

上顎は左右2枚の骨がちょうど顔の中心で別れており、この中心線は「正中口蓋縫合(せいちゅうこうがいほうごう)」という名前です。
幼少期から成年期にかけて、正中口蓋縫合の隙間は骨成分によって癒着し、やがて一枚の骨となります。

子供の顎の骨はまだ完全に癒着していないため、急速拡大装置を使って顎の骨の隙間を広げ一定期間保ちます。
この骨が完全に一枚になる前に、急速拡大装置を適用しなくてはなりません。
骨の形成状況が重要な判断基準となるため、症状としては不正咬合で適用しても、患者様の顎骨を検査した上での判断です。

子供に急速装置を使うデメリット

子供に急速装置を使うデメリット

急速拡大装置は昔からある手法ですが、ワイヤー矯正やマウスピース矯正と比べると、あまり症例が多くありません

その理由の1つは、急速拡大装置を適用できる患者様が限られている事が挙げられます。
もう1つは患者様への負担が大きく、特に子供に使用する場合には以下のデメリットが発生しやすいからです。

装着時の違和感

装着時の違和感

急速拡大装置の装着は、金属製の板が上顎に据え付けられ、太いワイヤーが奥歯を外側へ押し出すため、その違和感と痛みは決して快適とはいえません

人によっては疼きを感じる事もあり、装置は自分で取り外す事ができないため、慣れるまでの間は不快感が続きます。
1週間程度でこれらの違和感は薄れてきますが、完全になくなる事はありません。これには個人差もあります。

見栄えが気になる

見栄えが気になる

 

急速拡大装置は、上顎の左右の奥歯にバンドを装着しますが、口を開けて笑うとき装置が見えると嫌がる人も多いです。
主に第一小臼歯と第一大臼歯にバンドを取り付ける事が多く、第一小臼歯は会話をすると金属が見え隠れします。
歯科医はメリットデメリット全て説明するため、思春期の患者様などは、見栄えの悪さを懸念し他の治療方法を求める方も多いです。

鼻・口元の痛み

急速拡大装置を取り付けた直後は、今までとは違う痛みに最初は驚くかもしれません。
上顎骨が広がることで、鼻腔も影響を受けるため、鼻の奥に痛みを感じたり、人によっては口周り全体に鈍い痛みを感じます。

痛みは歯槽骨の移動過程に作られるプロスタグランジンという成分が原因で、数日で痛みは慣れてきますが患者様の負担になることは間違いないです。

顔つきの変化

顔つきの変化

矯正拡大装置によって、鼻腔が広がることで小鼻が横に大きくなるのを気にする方もいます。
口角の横幅が横に伸びたり、小鼻の広がりは骨の変化に伴い口輪筋(こうりんきん)が影響を受けるからです。
幼少期の顔は変わりやすく、あまり目立たない方や矯正治療が終わると元に戻る方もいるため、全員とはいいきれません。

急速拡大装置のメリット

急速拡大装置のメリット

デメリットを知り、不安を感じてしまい急速拡大装置を避けようとする方は少なくありません。
急速拡大装置だけを使った矯正治療はおすすめしませんが、他の治療方法と組み合わせる事で効果を高める事ができます。
さらに急速拡大装置には下記のようなメリットがあるため、歯科医とよく話し合って矯正計画をたてた上で上手に利用してみましょう。

短期間で顎を拡大できる

急速拡大装置を使った矯正治療では、最短約3ヶ月で効果が現れます。
装置は固定されており、歯科医の指導に沿って装置を拡大しますが、その幅は1日約0.2mmから0.25mmです。
患者様の顎骨の繋ぎ目の柔らかさなども関係するため、この治療計画は慎重に計算しなくてはなりません。

子供の骨の形成はまだ未発達で柔らかいため、成人と比べると期間も短くて済みます。
成人の不正咬合の治療は少なくても2年はかかる治療も、急速拡大装置の期間は長くても6ヶ月です。

抜歯のリスクを軽減

抜歯のリスクを軽減

急速拡大装置を選ぶ理由に、抜歯をしたくない事を挙げる人は少なくありません。
歯列矯正は基本的にそれぞれの歯のスペースをどうやって確保するかで治療方法が異なります。

全体を正常に噛み合わせるために抜歯はやむを得ない場合もありますが、抜歯リスクを軽減する方法の1つは、急速拡大装置を使う事です。
あくまで患者様の歯並びを検査した上で最終的な判断ですが、子供の永久歯が生え変わる混合歯列期が最も適しています。

口呼吸を改善できる

上顎の骨が拡大されると鼻腔が大きくなり、今までより呼吸の軌道が大きくとれるようになるため、鼻呼吸しやすくなります。
急速拡大装置で噛み合わせが正常になると口を閉じる事ができ、自然に口呼吸が改善されるのも1つのメリットです。

急速拡大装置を使った子供の治療期間

急速拡大装置を使った子供の治療期間

 

急速拡大装置での治療期間は子供の歯の状況によりますが、約1ヵ月から3ヵ月、後戻りを防ぐための保定期間をいれても6ヵ月の装着です。
しかし、急速拡大装置だけでの矯正治療はあまりおすすめできません。

なぜなら上顎が広がってスペースが確保できても歯の向きや角度も大切でそのためにはワイヤー矯正やマウスピースを用いる事があるからです。

急速拡大装置を使用する場合に注意すべきこと

急速拡大装置を使用する場合に注意すべきこと

抜歯のリスクを軽減する急速拡大装置は、メリットもデメリットも多いため悩んでしまう患者様も多いかもしれません。
しかし、期間が短くなる事や抜歯のリスクが減る事など魅力的な点も持ち合わせています。
短期間での効果を安全に得るために、矯正開始時には次のような点にも注意しましょう。

念入りな歯磨きが必要

念入りな歯磨きが必要

急速拡大装置は取り外しができない上に、器具が上顎に装着されているため、食べ物が絡まりやすくなっています。
急速拡大装置を装着中は、ガムや繊維質豊富なもの、麺類などはあまりおすすめしません。

もちろん歯磨きも装着しながら行いますが、通常の歯磨きのようにはいかないため、磨き残しがないか確認してもらいましょう。さらにマウスウォッシュを使って殺菌します。
虫歯になってしまうと治療計画を変更し虫歯の治療を優先するため、矯正治療中はいつもよりも念入りな歯磨きが必要です。

対応できる歯科医が少ない

急速拡大装置は、歯の知識はもちろん正中口蓋縫合線にまつわる外科的な知識と経験が必須です。
矯正治療は、歯並びを綺麗にするだけではなく機能的正常咬合も考慮して治療計画を作成しなくてはいけません。

急速拡大装置だけの完全な歯列矯正は、かなりの技術と経験を必要とするため、対応可能な歯科医を探す必要があります。
万が一みつけたとしてもリスクが全くないとはいえません。矯正治療計画をよく確認し、疑問や気になるところは積極的に聞いてみましょう。

子供の矯正治療を検討しているなら

子供の矯正治療を検討しているなら

子供や青年期に矯正治療をする最大のメリットは、治療期間も体への負担も少なくてすみ、その後の健康も改善される事です。

特に急速拡大装置は上顎のつなぎ目がまだ乖離できるほんの数年しか適用できないため、本当に子供に最適な治療法はなにかを見つけるために歯科医に相談しましょう。

経験豊富な歯科医を見つける事が、子供の矯正治療を成功させる第一歩です。そのためにも、普段から評判のよい小児歯科を調べておくことをおすすめします。

まとめ

まとめ

 

子供への急速拡大装置の使用は、使用時期や歯列状況はもちろん装置を装着した後のリスクも考慮してよく見極めなくてはなりません。
特に矯正治療で起こるトラブルの多くの原因は、歯科医の経験や症例の少ない事が挙げられます。また、歯科医とのこまめな意思疎通も重要です。

矯正拡大装置を装着できる条件はいくつかあるため、いくら抜歯するリスクがないからといってやみくもに行える治療方法ではない事を理解してください。




監修者:銀座青山You矯正歯科グループ 理事長・総院長 青山健一

理事長・総院長 青山健一 1965年 広島県呉市生まれ
1990年 広島大学歯学部卒業
1992年 南青山デンタルクリニック開院
2001年 医療法人社団 健青会 設立
2011年 日本で初めての「部分矯正専門医院」のYou矯正歯科を開設
2021年 You矯正歯科 池袋西口医院開設
2021年 You矯正歯科 広島紙屋町医院開設(銀座、青山等で9医院開院中)
▼総院長ブログ「幸せってなぁに?」もご覧ください。

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