矯正治療で手術が必要なケースを歯科医が解説|外科的矯正の特徴や流れもご紹介します

【監修:青山健一】

矯正治療で手術が必要なケースを歯科医が解説|外科的矯正の特徴や流れもご紹介します

歯並びやかみ合わせが悪いまま放置しておくと、さまざまなトラブルに発展するリスクがあるため近年では矯正治療を行って歯並びをきれいにする人が増えています。
一般的な矯正治療では、矯正装置を歯に取り付けながら徐々に力をかけて歯並びを治しますが稀に手術が必要なケースも少なくありません。
ここでは手術を要する外科的矯正の特徴や流れについて解説していきます。

矯正治療で手術が必要になるケース

矯正治療で手術が必要になるケース

下顎が大き過ぎる受け口や下顎が歪むことで顔が曲がっている場合など、顎変形症と呼ばれる骨格的な要因が強い症例においては矯正治療とともに手術が必要となります。
顎変形症以外の症状としては前歯で物がかみ切れない開咬や下顎が小さい出っ歯などがあり、そのほか睡眠時無呼吸障害にも外科的矯正治療が用いられることがあります。

顎が大きくズレている

顎が大きくズレている

顎が大きくズレている受け口の場合「反対咬合を伴う顎変形症」と診断されることが多く、通常の矯正治療のみでは適切なかみ合わせに戻すことは困難です。
そのため顎を削る手術を併用した外科的矯正を行います。

顎が大きくズレている受け口は下顎の骨を後方へ移動させると同時に、上顎の骨を前方へ移動させることで正しい顎の位置に戻すことが可能です。
その後、矯正歯科治療を行うことで歯並びをきれいにしてかみ合わせを安定させます。

通常の歯列矯正では治療が困難

歯を数本抜いてスペースを作るなど歯列矯正だけで、かみ合わせの調整が可能な場合は基本的に手術は必要ありません。
しかし、上下の顎のバランスが悪く通常の歯列矯正だけでは治療が困難だと診断された場合には、外科的矯正と歯列矯正を併用することで安定したかみ合わせが実現できます。

外科的矯正の特徴

外科的矯正の特徴

外科的矯正の特徴は、顎の骨を削るなど大がかりな手術を行う必要があることです。
上下の顎のバランスが悪く、もともとのかみ合わせが上下反対になっている場合など矯正歯科治療を行うだけでは患者さんのかみ合わせのバランスが取れない場合に手術を行います。

手術することで骨格に対してのアプローチも可能となります。
手術となると傷が残ることを心配される患者さんもいますが、顎の骨を切る手術は口の中から行うため顔に傷が残る心配はありません。

通常の矯正治療と外科的矯正治療の違い

通常の矯正治療と外科的矯正治療の違い

通常の矯正治療と外科的矯正治療の違いは手術の有無のほかに顎の骨に対する歯の角度が異なる点です。
上下の顎の骨のバランスが悪い場合でも通常の矯正治療によってある程度の改善は見込めます。
通常の矯正治療を行う場合は歯を傾斜させることでかみ合わせを調整しますが、傾斜可能な歯の角度は限られています。

一方で、外科的矯正治療では歯を傾斜させずに顎の骨に対してまっすぐに並べることが可能です。
また、通常の矯正治療では見た目に大きな変化がないのに対し外科的矯正治療では見た目にも変化が現れることも両者の違いです。

外科的矯正の流れ

外科的矯正の流れ

カウンセリングから矯正治療を行うまでの外科的矯正の流れをご紹介します。

初診・カウンセリング

まずは初診の際にカウンセリングを行い、患者さん自身の悩みについてもヒアリングします。
些細なことでも気になることがあれば、カウンセリングの際に医師に相談しておくと安心です。
歯科医はカウンセリング結果をもとに患者さんに寄り添った治療法を提案・説明します。

精密検査

顎の変形の有無など骨格を確認するためにレントゲン検査やCT検査などの精密検査を行い、さらに型取りなどを行って現在のかみ合わせの状態も確認します。
精密検査の結果、外科手術が必要となる患者さんには詳しい説明を行った上で治療の意志を確認します。

術前矯正治療

術前矯正治療

外科的矯正においても、手術を行う前の術前矯正治療で上顎と下顎の形態・位置に合わせた歯並びに整えていきます。
術前矯正治療では通常の矯正治療同様に歯に矯正装置を装着し徐々に力を加えて歯の位置を移動させます。

矯正装置は銀色の金属製のものが一般的ですが見た目が気になる場合には透明の装置にすることも可能です。
歯の動くスピードには個人差があるため術前矯正治療の期間は数ヵ月から2年前後と人によって大きく異なるのが特徴です。

手術

手術

術前矯正治療によって歯並びを改善した後、手術前に再度検査をして現在の状態を確認します。
レントゲン検査やCT検査などの精密検査のほか顔や口の中の撮影を行った上で、最終的に顎を動かす位置を決めます。
また同時に全身麻酔を行うための検査も必要です。

手術を行うためには入院が必要となり入院期間は個人差がありますが2週間~3週間程度です。
手術では顎の骨を切り取ってプレートやネジを使用して正しい位置に固定します。
術後は痛みや腫れが生じ、手術の翌日になるとゴムで噛み合わせを固定する必要があるため自由に口を開いたり動かしたりできなくなります。

また口から物を入れることもできなくなり、流動食を摂取するため鼻から細いチューブを入れて胃まで流し込まなければなりません。
そのほか、溜まった血液を吸い出すチューブを口の中に設置しますが術後3日程度で抜き出せます。
手術後の傷の治りについては個人差があるものの10日程で落ち着く人が多いです。

術後矯正治療

術前矯正治療で概ね歯並びは整っているため、術後矯正治療ではより正確かつ安定したかみ合わせにするための歯科矯正を行います。
期間は歯の移動する速度によって異なり数カ月から1年が目安です。

手術を受ける場合は入院が必要

手術を受ける場合は入院が必要

骨を削るため手術を受ける際には入院が必要です。
顎の骨を切り取って正しい位置で固定する必要があるため術後数日間は口を自由に動かせません。
また通常通り食事が摂取できず流動食を摂ることになるため入院での治療が必要となります。
入院期間は病院や個人の治癒力によっても異なりますが、2週間から3週間程度が目安です。退院後も通院して外来で診察を行います。

矯正治療における手術は保険適用?

矯正治療における手術は保険適用?

一般的な矯正治療は「審美的な治療」のため保険適用外となります。
自由診療扱いとなるため、検査料・治療費などは医療機関が独自に設定することが可能であり治療費は全額患者さんが負担することになります。

したがって、一般的な矯正治療における手術に関しても基本的に保険は適用されません。
ただし、生まれながらにして口腔内に異常がある先天性疾患で厚生労働省が定めている59疾患に該当する場合は例外です。

例えば顎変形症・前歯3歯以上の永久歯萌出不全が原因の埋伏歯開窓術を必要とする咬合異常など、一定の条件を満たす場合には保険が適用されるケースもあります。

「顎変形症」の診断があれば保険適用

また、外科的矯正治療の症例としても多い「顎変形症」の診断された場合は手術も保険適用となります。
顎の骨の大きさ・形・位置などに著しい異常があることが原因でかみ合わせに支障をきたしていたり、顔が変形していたりする場合には顎変形症の診断が下されます。

歯列矯正に保険適用が可能となるのは、受け口や出っ歯の原因が顎変形症によるものだと口腔外科または形成外科にて診断され、かつ手術が必要だと認められた場合だけです。

「顎口腔機能診断施設」のみ保険適用

「顎口腔機能診断施設」のみ保険適用

顎変形症による手術の必要性が認められた場合でも、歯列矯正に保険が適用されるためには、顎口腔機能診断施設に指定されている医療機関で矯正治療を行うことが条件となっています。
顎口腔機能診断施設として認定される医療機関には定められた基準を満たす必要があります。

例えば国から指定された検査機器の導入・他の医療機関との連携体制が整っている・そのほかスタッフの人員配置などさまざまな条件をクリアしなければなりません。
気になる方は、地方厚生局のホームページから自身が居住する地域の顎口腔機能診断施設を検索できます。

「高額療養費制度」の対象

「高額療養費制度」の対象

保険診療を受ける際に入院や手術で医療費の自己負担額が高額になった場合、患者さんの負担を軽くするために高額療養費制度が設けられています。
高額療養費制度の対象となるのは保険診療のみであるため自由診療となる通常の矯正治療には適用されません。

しかし、「顎変形症」など保険適用の対象となる外科的矯正治療の手術の場合は高額療養費制度が適用されます。
同じ医療機関での1ヶ月の医療負担額が自己負担限度額を超えた場合には、限度額を超えた金額分が還付される制度です。

ただし、事後申請となる場合は一度全額負担で支払った後に還付されるため事前に医療費が高額になることが予想されるため事前に申請しておくことをおすすめします。
事前申請を行った場合、医療機関では自己負担限度額のみの支払いとなります。
高額療養費制度の申請先は被保険者証に記載されている保険者となるため、不明点がある場合は直接保険者にお問い合わせください。

矯正治療の手術で不安なことは歯科医に相談しよう

矯正治療の手術で不安なことは歯科医に相談しよう

矯正治療に対する知識を持ち合わせている人は少なく、初めて矯正治療を行う際には誰しも緊張や不安を感じます。
矯正治療は長期的な治療となるため大きな不安を抱える人も多く、なかなか治療への一歩を踏み出せずに悩む人もたくさんいます。

特に手術を必要とする外科的矯正であればなおさら不安は大きく手術と聞いて不安を感じない人はいません。
矯正治療で手術が必要だと診断された場合、疑問に思うことや不安に感じていることは些細なことであっても都度歯科医に相談しましょう。

外科矯正の専門医の話を聞けばきっと不安も和らぎます。
また、手術内容だけでなく医療費について不安を抱える人も多く、保険は適用されるのか医療費はどのくらいになるのかなど費用についても外科矯正専門の歯科医に相談してみましょう。

まとめ

まとめ

矯正治療で手術を要する外科的矯正の特徴や流れについて解説してきました。
通常の矯正治療のみではかみ合わせの改善が難しい場合、手術を伴う外科的矯正が行われるケースは少なくありません。

通常の矯正治療が歯列矯正のみで行われるのに対し、外科的矯正では顎の骨を切り取るなど入院を伴う手術と歯列矯正を併用して行います。
矯正治療は自由診療となるため保険適用外ですが、外科的矯正において顎変形症と診断された場合など一定の条件を満たす症例には保険が適用されます。

また、顎変形症と診断されれば入院費・手術費などは高額療養費制度の対象です。
かみ合わせが悪いまま放置していると、口腔内だけでなく身体に悪影響を及ぼす可能性もあります。
かみ合わせに悩みを抱えている場合は、早めに一度、外科矯正専門の歯科医に相談してみましょう。




監修者:銀座青山You矯正歯科グループ 理事長・総院長 青山健一

理事長・総院長 青山健一 1965年 広島県呉市生まれ
1990年 広島大学歯学部卒業
1992年 南青山デンタルクリニック開院
2001年 医療法人社団 健青会 設立
2011年 日本で初めての「部分矯正専門医院」のYou矯正歯科を開設
2021年 You矯正歯科 池袋西口医院開設
2021年 You矯正歯科 広島紙屋町医院開設(銀座、青山等で9医院開院中)
▼総院長ブログ「幸せってなぁに?」もご覧ください。

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