出っ歯を自力で治すリスクを歯科医が解説｜出っ歯の治療方法や部分矯正のメリットもご紹介します

【監修：青山健一】

日本人に多いといわれる上顎の前歯が下顎より突き出ている「出っ歯」で悩んでいる人は少なくありません。
出っ歯になると人前に出ることが嫌になったり、自分に自信がなくなったりして人格にまで悪影響を及ぼすことがあります。

歯並びをよくしたいと思いつつも、矯正歯科に通うのはお金と時間がかかるのはもちろん、治療に対する恐怖感からなかなか踏み出せません。

そこで、インターネットを見て自力で出っ歯を治すことができたらと考えてしまいますが、自力治療には大きなリスクがあります。
今回は出っ歯を自力で治すリスク・出っ歯の治療方法・部分矯正のメリットについて解説します。

自力で出っ歯を治すリスク

自力で出っ歯を治すためには強い力を歯に与えなければなりません。
インターネットでは自力で出っ歯を治せたようなコメントを見かけますが、物理的には絶対不可能であり大きなリスクを抱える可能性があります。

具体的にどのようなリスクがあるのか解説します。

歯の寿命が縮む

自力で歯並びを治そうとするためには強い力が必要になります。
歯列矯正ではワイヤーなどを使い強い力で歯を動かしますが、あくまで専用の矯正装置を利用してさまざまな症例・豊富な経験・専門の知識に基づいて歯科医が行うものです。

そのため健康な歯・歯茎・骨にダメージを与えることなく、時間をかけて確実に歯を移動させ歯列が整えられます。
しかし、出っ歯を自力で治そうとする人は、歯を押すことで歯並びが簡単に改善されるのではないかと考えがちです。

ところが力任せに歯を押すと、歯や顎の骨に必要以上の負荷がかかり、それが原因で歯の寿命が縮み、最終的には歯を失ってしまうリスクがあります。
健康な自分の歯で老後まで食事を美味しく食べたいのであれば、自力で矯正しようとせずに医師にきちんと相談しましょう。

噛み合わせが悪化する

次に出っ歯を自力で治すリスクとして噛み合わせが悪化することがあげられます。
矯正歯科に通えば、「いつまでに何mm動かす」など歯の状況を見ながら治療計画を立てるため、歯への負担を最小限に抑えることが可能です。

しかし、自分で力を加えて出っ歯を治そうとすると必要以上に歯を動かしてしまったり、間違った方向に歯が歪んだりして噛み合わせがさらに悪化してしまう危険性があります。

噛み合わせが悪化すれば歯だけではなく体のバランスにも影響を与え、さまざまな病気を発症させる危険性も出てきます。
その上、悪化した噛み合わせを治療するためには長い時間と高い治療費が必要です。

歯肉が腫れる

出っ歯を自力で治そうとすると、歯だけでなく歯ぐきや歯槽骨にも取り返しのつかない大きなダメージを与えかねません。
その結果、歯根が破折して歯肉が腫れるリスクも避けられません。

出っ歯の自力治療に効果は期待できない

出っ歯の自力治療には、物理的に不可能であり効果は全く期待できません。
それどころか、さらに歯を傷つけて重大な損傷を負うリスクさえあります。

歯は舌・頬・口のまわりの筋肉の働きや角度によっても生え方が人によって違います。
また、骨格の成長具合によっても矯正方法が人それぞれ異なるため専門の矯正歯科で治療しなければなりません。

出っ歯は自力では治せませんが、これ以上歯並びを悪化させないように普段から日常生活に気をつけることはできます。
歯並びを悪くしないためのポイントを4つ紹介しましょう。

頬杖をつかない
口呼吸をしない
舌癖を改善する
指しゃぶり・爪かみをやめる

頬杖は歯並びを悪くする習慣の代表的なものです。

人の頭は約5kgもあり、頬杖をつくとその重さが顎の骨に一気にかかることになるため歯並びはもちろん顎のずれを起こす原因になります。

朝目覚めるとのどがカラカラになっていたり、仕事中気づけば口が開いていたりすることはありませんか。
これらは口呼吸が原因で起きている症状です。口呼吸を続けると、唇が前歯を押してくれなくなるため出っ歯が悪化する原因となります。

口呼吸が癖になっている方は、早急に鼻呼吸を習慣づけてください。
また、舌を上の前歯に当てる癖がある方は、徐々に前歯を押し出す原因になるためやめましょう。さらに、指しゃぶり・爪かみも出っ歯の原因です。

特に子どもの場合、遅くとも3歳頃までに指しゃぶりをやめるように小児科で指導しています。自宅で親御さんがお子さんの様子に気をつけてあげてください。
このように出っ歯は自力では治せませんが、日常生活の中で今の歯並びを悪化させないようにすることは可能です。

出っ歯の治療方法

出っ歯を治療するには、大きく分けて下記の4つの方法があります。
それぞれの治療方法についてみていきましょう。

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は、歯の表面や裏面に「ブラケット」と呼ばれる器具を取り付け、ワイヤーを通して行う治療法です。

出っ歯だけでなく、あらゆる歯の歪みを治すことができます。
しかし、歯を大きく動かすことになるため、健康な歯を抜歯しなければならない場合もあります。

ワイヤー矯正は歯列矯正として馴染みのある方法ですが、症状によって1～4年の治療期間が必要で、費用が100万円程度かかるなど負担が大きいことがデメリットです。

マウスピース矯正

マウスピース矯正は、歯に取り付ける透明のマウスピースを利用した治療法です。
これまでの矯正治療では装置がまわりから見えてしまうため、治療を躊躇っていた人も透明なマウスピース矯正ならやってみようとする人も多いです。

また、矯正をしていることが外から分かりづらいため、人と接する機会の多い職業の方でも抵抗少なく始められます。
マウスピース矯正はワイヤー矯正と違い、取り外しが簡単で食事や歯磨きがしやすいため衛生面でも安心です。
ただし、重度の出っ歯はマウスピース矯正では対応できない場合があります。

マウスピース矯正は取り外しができるため、度々装着を忘れてしまうと矯正に時間がかかるというデメリットがあります。
マウスピース矯正は1日20時間以上装着しなければ、期待できる効果がないことも覚えておきましょう。

外科矯正

矯正器具だけでは十分な歯並びの改善が得られない場合の選択肢として、外科矯正があります。
顎の骨に外科手術を施すため、歯並びだけでなく顔のバランス改善の効果が期待できます。

ただし、全身麻酔での手術になること・1～2週間程度の入院が必要であること・術後の食事制限といった体への負担が大きい治療法です。

出っ歯だけを治す方法

全体的な矯正ではなく、出っ歯だけを治す方法として2つの治療法があります。
具体的に詳しくみていきましょう。

部分矯正

部分矯正とは歯並びの気になる部分だけを治療する方法で、上の前歯2本だけを治したいとき・前歯の傾き・隙間を治したいときなどに有効です。
気になる歯だけをピンポイントに動かすため、治療期間や費用の大幅カットが可能になります。

部分矯正ではワイヤー矯正を装着する方法が主流ですが、歯の裏側からの治療やマウスピース矯正など目立たない方法もあります。
ただし、表側に装着するより裏側に装着するワイヤー矯正の方が費用が高く、治療期間も長くなりがちです。

セラミック矯正

セラミック矯正は、歯を削り上から被せ物をすることで、歯並びが整っているように見せる方法です。
歯の色も選べるため、自分のイメージする理想の口元を手に入れることができます。

しかし、健康な歯を削るということは歯の寿命を縮める原因につながることを認識しておきましょう。
さらに、セラミックを被せるため虫歯になりやすくなるというデメリットもあります。また、セラミック矯正は歯の位置そのものを変える治療法ではないことを覚えておいてください。

出っ歯の治療法について詳しくお聞きになりたい方は気軽にお問合せください。下記のリンクから無料の矯正相談の予約ができます。

無料矯正相談Web予約はこちら

部分矯正のメリット

矯正といえば費用と時間がかかるイメージがありますが、部分矯正は前歯の出っ歯だけを治したりガタガタの歯並びのところだけを治したりできます。
結婚式・面接などを控えて時間があまりない方にはおすすめです。

ここでは部分矯正の3つのメリットについて詳しく解説します。

治療費が安い

部分矯正のメリットは、治療費を安くできることです。
歯の全体にワイヤー矯正を行う場合、100万円程度かかってしまいますが部分矯正なら、気になる部分だけに器具を装着するため20～50万円前後で治療できる可能性があります。
費用の面で矯正治療に踏み出せない方でも始めやすいのではないでしょうか。

痛みが少ない

部分矯正であれば、痛みが少ないため安心して治療が始められます。
歯列矯正を始めるときに気になるのが、歯が動くときにともなう痛みですがその度合いは歯が動く距離によって変わります。

しかし、治療部分はピンポイントのため全体矯正よりも痛みを抑えられるのがメリットです。
痛みが気になって矯正治療を躊躇っている方も、部分矯正なら検討しやすいため矯正を始める人が増えています。

短期間で治療できる

部分矯正は短期間で治療できることも大きなメリットです。
大人になってからの矯正は時間がかかることがネックで、歯全体にワイヤー矯正をするとなれば長くて4年ほどかかってしまいます。

しかし、部分矯正であれば、3か月～1年程度で治療を完了させることができます。
大事なプレゼンの前に歯並びを改善したい・結婚式に間に合わせたいなど、忙しいスケジュールの中でもスムーズに矯正治療に取り組めるのがメリットです。

自力で出っ歯を治そうとする前に

自力で出っ歯を治すのはリスクが高いことは既にご紹介しました。
それでは自力で出っ歯を治そうとする前にやるべきことを解説します。

歯科医院のカウンセリングを活用

多くの歯科医院では、初回無料のカウンセリングを実施しています。
本当に矯正が必要なのか、どんな方法で治療したいのかを決めかねている場合でも、まずはカウンセリングで歯科医に相談してみましょう。
カウンセリングでは問診票を記入してもらい、歯科医師は患者さんが気になっているところを具体的に伺います。

次にお口の中をチェックして患者さんが抱えている悩みをどのようにして解消していくのか簡単に説明します。
詳しい検査は次回以降になるのが一般的です。初回カウンセリングで聞いておきたい点をまとめておきます。