【監修:青山健一】
目 次
歯列矯正は歯を動かして治療を進めていく関係で治療中は痛みを伴う可能性がある治療法です。
そのため、痛みがない治療は効果がないという人も見えますが治療法によっては痛みを感じないこともあります。
人によって違和感がある程度で痛みと認識しない人も多くいます。
我慢できないほどの痛みであればすぐに歯科医師に相談したほうがいいですが多少の違和感があることは治療の性質上あるということを理解しましょう。
そこで今回は矯正治療の痛みの原因や痛くない矯正治療について解説していきます。
矯正治療中に「痛くない」という人もいる?
痛みの感じ方は個人差があるため一概にはいえませんが正しい歯列矯正を行って痛みが酷くて治療が続けられないというケースはほとんどありません。
矯正中に感じる痛みは「圧迫されるような痛み」と表現されることも多く、人によっては「痛くない」という人もいます。
また、昨今では痛みを和らげる治療法もあるため「痛くない」というよりも「痛みを感じにくい」というほうが正確かもしれません。
矯正治療の痛みの原因
前述でも述べているとおり個人差はありますが矯正治療には痛みが発生してしまいます。矯正治療に伴う痛みには大きく3つの種類に分類することができます
痛みの原因について正しく理解をすることで、実際に痛みが発生しても不安にならないようにしましょう。
歯が動いている
矯正治療をするということは歯を動かして矯正をしているということです。そのため、歯が動いたことによる痛みを感じることがあります。
この痛みは食事を摂っているときや歯を強く咬んだときに感じることがあります。強く咬まなければ少し歯が浮いたような違和感があるだけです。
20年以上前の矯正治療を受けたことがある人はこの痛みが非常に強くて耐えられなかったという人もいらっしゃるかもしれませんがこれは当時の技術や装置の影響によるものです。
現在の矯正治療であれば改善されているためそういった強い痛みを感じることはほとんどありません。
矯正装置が粘膜にあたる
矯正装置が粘膜にあたって痛みが起きている場合、様々な原因が考えられます。
まずはワイヤーが刺さっている場合です。これはワイヤー治療を行っているときに歯が動いてワイヤーが徐々に刺さっていくことがあります。
シリコンやワックスで対応することが可能ですが長く出過ぎている場合は歯医者に相談してワイヤーを切ってもらうことが一番です。
次に矯正装置が頬の粘膜にあたってしまう場合です。このときはシリコンやワックスで覆うことで改善することが可能になります。
最後に矯正装置が舌にあたる場合です。この場合、舌に痛みを強く感じる場合は矯正装置を変える必要があります。
舌は頬などに比べても感覚が鋭いため痛みに耐えられそうにない場合は早めに医師に相談をしましょう。
矯正装置による痛みは改善できる場合があるため違和感があれば早めに相談をして改善をするべきです。
虫歯に侵されている
矯正中は虫歯に侵されやすい環境になってしまいます。そのため、治療前に虫歯がある人は虫歯治療を優先してから歯列矯正を行いましょう。
また矯正中に虫歯になってしまった場合は虫歯の程度によって方針を決めます。
たいていの場合は矯正装置を外さずとも治療ができることが多いですが装置が邪魔だったり進行が酷い場合は矯正を中断して虫歯治療に専念することもあります。
矯正中に虫歯で痛みが発生してしまうと今後に大きく影響するため歯医者と相談をして早めに治療方針を決めましょう。
歯が動くときに感じる痛みの特徴
それでは歯が動くときに感じる痛みはどのような特徴があるのでしょうか。
矯正治療を始めて装置を付けてすぐに痛みが出ることはほとんどありません。なぜなら矯正装置で力を加えても歯がいきなり大きく動くことはないからです。
早くても矯正治療を始めて数時間後から「歯が浮いたような感じ」や「痛痒いような感じ」というような違和感がある程度です。
痛みを感じる仕組み
歯は骨の中に埋まっており、少し力を加えただけで移動することはなく矯正装置で力を加え続けることでようやく少しずつ移動をします。
歯に力を加え続けることで歯が骨に押し付けられて歯の周囲にある歯根膜が正常に戻ろうとしますが矯正装置で力を加え続けることで少しずつ矯正をしていくのです。
このときに押し付けられた側の骨が溶けて反対側に骨が形成されていきます。これを繰り返していく中でプロスタグランジンE2というのが痛みの原因となる物質です。
この物質が発生することで痛みの原因となるのです。
痛みが続く期間
矯正治療を始めてすぐに痛みは発生しません。個人差はありますが装置を装着して3時間から6時間くらいで違和感のような痛みを感じてそこから3日程度痛みを感じます。
そこから矯正治療で通院を月に1~3回程度繰り返す中で装置の調整をすると同じように痛みを感じることがあるかもしれません。
しかし、この痛みも調整を繰り返す中で少しずつ和らいでいき3か月から半年たつ頃には痛みもほとんど感じることがなくなります。
痛みの感じ方はそれぞれですがワイヤー矯正の場合、耐えられない痛みのときは装置が締めすぎているかもしれないため早めに医師に相談をしましょう。
「痛くない」場合は歯が動いていない?
「歯が動いているときには痛みが発生する」ということは「痛くない」場合は矯正がうまくいってないということでしょうか。
前述でも紹介しているとおり、歯が痛むのは3日目まででそこから痛みが弱くなる傾向にあります。
全く何も感じなければ医師に相談をしたほうがよいでしょうが「痛くない」からといって効果がないということではないようです。
さらに、昨今では痛みが和らぐ治療法や矯正装置も開発されてるため「痛くない」場合でも「効果がない」とはならないようです。
痛みは徐々に軽減していく
前述でも紹介しているとおり、歯列矯正の痛みは装置を付けて初日から3日目までがピークのようです。
そこから痛みが軽減されていき装置の調整を行ったときに痛みが出る場合もありますがそれも徐々に和らいでいきます。
痛みへの慣れも生まれるため、痛みは徐々に軽減されていきます。逆に痛みが引かないような場合は早めに歯科医師に相談しましょう。
痛みが少ない治療もある
最近では「痛くない歯列矯正」を売り出している歯科医院もあります。痛みが気になっている人は治療前に医師に相談すると痛みが少ない治療法を提案してもらえます。
その中でもマウスピース矯正のインビザラインは有名です。
これはほかのマウスピース矯正と違い一度に動かす量を0.2㎜から0.25㎜と少なくすることで痛みを和らげる治療法になります。
その分、費用や期間が増えるなどデメリットがある場合もあるため痛みを極力減らしたい人は歯科医院に問い合わせをしてみるのもいいかもしれません。
矯正治療で痛みが強いときの対処法
ここまで矯正治療の痛みはそこまで酷くないと紹介してきましたが人によっては我慢ができない痛みを感じることがあります。
そんなときは我慢するのではなく早めに対処をすることで痛みを緩和することが可能です。
矯正治療で生じる痛みの対処法を紹介します是非、参考にしてください。
痛み止めを飲む
歯が動いているような痛みは継続的に続くものではありません。痛みに波があったり数日経てば痛みが引いていく場合が多くあります。
そういった痛みには痛み止めを飲むことも有効ですが副作用が生じる可能性があります。
特に妊婦や持病を持っている場合には歯科医師としっかりと相談したうえで使用するようにしましょう。
矯正用ワックスを使う
矯正装置につけることができる粘土のような薬剤のことを矯正用ワックスと呼びます。
矯正装置の硬くて尖っている部分が粘膜にあたっていると粘膜を傷つけて痛みの原因となることがあります。そんな時に尖っている部分を覆うように使用するのが矯正用ワックスです。
矯正用ワックスは様々な種類があるため一番効果的なものを選択して使用しましょう。
歯科医に相談する
これまで紹介してきた2種類のケースとは違って原因が不明な場合はすぐに歯科医師に相談しましょう。
歯列矯正は通院回数が少ないため次回の通院まで待っていると事態が悪化してしまうことがあります。
矯正治療は期間も長く多少の痛みは慣れてしまい相談するまでもないと自分で判断してしまうことがありますが些細なことでも相談したほうがいいです。
時間が経ってからでは対応が出来なくなってしまうこともあり得るため痛みを感じた場合は早めに歯科医院に訪問をしましょう。
矯正治療中は虫歯・歯周病対策も重要
歯列矯正中は矯正装置が邪魔になり歯磨きが満足にできず、虫歯や歯周病にかかるリスクが高まります。
見た目を気にして歯列矯正をしたのに虫歯で歯がボロボロになってしまっては本末転倒です。
簡単にできる対策として歯磨きの方法を見直してみましょう。特に装置を付けていると装置と歯の隙間にプラークが溜まりやすくなってしまいます。
歯科医師に歯磨き方法を指導してもらうのもよいですが歯ブラシを変えてみるのも効果的です。
通常の歯ブラシに加えてブラシの先が尖っているような形のタフトブラシもおすすめです。
加えて矯正治療中に定期検診を受けて虫歯や歯周病も予防していきましょう。
矯正治療中の歯の痛みは歯科医に相談
前述でも紹介しているとおり、矯正治療中に歯の痛みを感じたら迷わずに歯科医に相談をしましょう。
特に歯列矯正は期間も長いため患者と医師が協力をして進めていかなければ治療がうまくいきません。
通院のタイミング以外でも気になることは些細なことでもしっかりと相談をしてコミュニケーションをとっていくことが矯正治療には重要なことです。
まとめ
今回紹介したように歯列矯正には少なからず痛みを伴うようです。しかし、痛みには個人差があり違和感程度としか受け取らないひともいるようです。
さらに、痛みの少ない治療法も増えてきており自分が思っているよりも「痛くない」場合でも心配ないということもわかりました。
しかし、気になっていることは些細なことでも医師に相談をして安心して治療を続けていきましょう。