【監修:青山健一】
目 次
開咬(かいこう)とは、歯並びが悪くかみ合わず前歯がでてる状態です。上下の歯で物を噛みきれず前歯と下の歯のすき間で噛む力が弱くなります。
矯正治療を行う方が多いのですが、顎変形症を患っている場合、外科矯正という口腔外科と連携した治療も一つの方法です。
顎の骨に問題がある患者様は手術の可能性もあります。健康保険が適用か、矯正治療の期間や費用についてお医者さんに相談してみましょう。
開咬の治療は健康保険の適用になる?
開咬の治療は、上下の歯の矯正治療となります。矯正歯科治療は、検査後に歯並びを矯正しますが、理由によっては手術が必要になります。
もちろん長い期間治療する事になるため健康保険の適応かどうかは
開咬とは歯並びが悪いだけではありません。顎変形症といわれる顎の変形が原因ということも考えられます。
これは、患者様の咀嚼に影響するだけでなく、消化状態が悪くなったり外科的治療が必要なため健康保険の対象となるのです。
保険適用には「顎変形症」の診断が必要
残念ながら、ご存じのように矯正治療の大半は保険適応となりません。保険適応する疾患はわずかです。
開咬の原因が骨にある場合、矯正歯科治療として指定の医療機関にて外科矯正治療を行う必要があるため治療費用に関しては健康保険が適応します。
開咬の場合、一番可能性としてあげられる保険適用の診断は、顎変形症です。顎変形症はいろんなケースがあるのはご存じですか?
骨が原因のものや患者様の食の偏りが関係する場合もあります。顎変形症と診断されても、指定された医療機関からの診断書が必要です。
外科的矯正治療の場合の治療費
外科的矯正治療はいくらぐらいかかるのでしょうか。もちろん保険が適用でなくても、治療は受けられます。
症状の頻度によりますが、健康保険の適応になる場合は3割負担となるため、できれば健康保険は適応したいところです。
顎変形症は歯科矯正とあごの骨の手術を行うため、治療費は健康保険を適応させると3割で済みます。
外科的矯正治療が必要な場合、全額負担の成人の治療では80万円から100万円ほどかかるのが相場です。
主に検査と診察に必要な料金、そして矯正と外科手術に必要な料金がかかります。
外科的矯正治療の対象
外的矯正治療の対象となる疾患は、主に外科手術を併用する矯正治療以外にも数十種類あります。これは外科手術が必要かどうかがポイントです。
骨の治療は本来なら外科となりますが、歯列矯正は指定されている疾患を除いたものは歯科治療のため外科ではないと考えます。
他にも唇や口蓋(こうがい)などの器官が正常に動かせない場合に外科手術が必要です。それぞれどんな症状があるのかみてみましょう。
開咬
開咬とは限られた奥歯でしか噛んでいないために、前歯にすきまができる症状です。いくらかみしめても前歯にすき間があるため噛み切れません。
また常に口が開いている状態にみえるため、見た目を気にして治療する人も多いです。診断によっては外科的矯正治療が必要な場合もあります。
偏位
偏位とは、偏った場所に位置している事を指します。偏位咬合(へんいこうごう)は上下の歯列の位地が左右にずれたりしている状態です。
偏位の症状は歯列だけではなく舌の位地や咽頭(いんとう)の位置が正常でないときにも使われます。
偏位は先天性よりも後天的な食習慣によるものが大きいです。虫歯の痛みをかばったりして左右にずれたまま何年も過ごすなどでかみ合わせが悪くなっていきます。
骨格が原因の出っ歯
出っ歯の原因は、環境が原因で起こった場合と、骨格が原因で起こる場合があります。骨格が原因だと外科的治療が必要です。
環境が原因で起こった場合は、矯正治療で解決する事もあります。上下の歯は通常まっすぐに生えるべきですが、偏った食生活などで位置がずれるのです。
子供の場合は比較的継続的な矯正治療で治ることもあります。なぜなら、骨自体が大人と比べて柔らかいからです。
骨格が原因の受け口
受け口とは、反対咬合の一つで噛みあわせが悪いだけでなく、本来上の歯が下の歯にかぶさるのですが受け口は下の歯が上の歯にかぶさっています。
原因は、歯並びが悪いためと、骨格が原因で受け口になる場合です。後者は骨の矯正または手術が必要でになります。
見た目が似ていますが、しゃくれ顎とはまた異なる症状でこの場合は上下の歯の噛み合わせの関係を確認して調整していきます。
外科的矯正治療で開咬を治すまでの流れ
顎の骨格や輪郭の骨格部分を調整して開咬を治療していう場合、歯列矯正と、外科手術の組みあわせで手術を適応していくのです。
先に外科手術のために必要な矯正を数か月施し、正しい位置にするためにどこの骨を削るなど外科的処置を行います。
歯科医は骨の手術は行いません。しかし、外科的矯正治療は、提携先の外科治療機関と患者様の状態を相談しながら歯科矯正を行います。
期間は1年を超えるものがほとんどです。通院回数はだんだん減っていきますが、器具を付けたり骨が戻らないように何度も保定しながらしっかりと正しい位置になるために矯正を続けていきます。
診察・検査
まず、患者様の診察や検査を行います。検査でかみ合わせの状態を調べ、骨格に問題ある場合は外科的矯正治療、そうでない場合は、矯正歯科治療です。
上下の歯が直る事で消化力が向上したりストレス軽減にもつながります。
術前矯正
開咬の原因と治療の方針が決まり、患者様の原因が外科的歯科治療となった場合、段階を経て外科的手術の準備をします。
手術の前に矯正治療を施していくのが最初の治療です。一番の原因は骨にあるため、外科的治療を行った後上下のかみ合わせを計算して歯の矯正をします。
手術
歯科矯正が終わったら、大学病院や歯科医院の斡旋で提携している医療機関での手術です。どこでも手術してもらえるわけではありません。
症状によっては入院も必要です。
術後矯正
術後矯正治療が必要かというと、手術後の骨は元に戻ろうとする傾向があるからです。
そのため、骨の位地や上下の歯の位地が安定するまで、定期的に通院しながら位置が安定するように経過観察をし、必要に応じて微調整も行います。
患者様の状態にもよりますが、矯正期間は約12か月ほどかかるのが一般的です。
保定
歯列矯正治療期間を経て安定した後、上下の歯に装着された歯科器具をはずしていくのですが、これで終わりではありません。
なぜなら、人間の体は形状記憶に優れており、生活環境などによって元に戻ってしまう可能性も0ではないからです。
それを防ぐために、最低でも1、2年は歯列が元に戻らないかどうかを注意深く観察していきます。医師の指示に従えば器具の脱着も可能です。
外科的矯正治療の他に開咬を治療する方法
たくさんのプロセスを重ねきれいな歯並びとなりますが、開咬を改善するために必ず手術するわけではありません。
現在歯科技術は非常に発達しており、開咬の度合いによっては外科的矯正が必要ない場合があります。
入院や何年も通院せずに普通の生活を送りながら治療を続けられるのが魅力の一つです。いくつかの方法をご紹介しましょう。
インプラント矯正
インプラント矯正とは、歯のインプラント治療ではなく、歯列矯正のために部品を埋め込みかみ合わせを調整する矯正方法です。
マウスピースのような外部圧ではなく内部から部品を使って矯正するため、より強力で治療期間が縮まる効果があります。
歯列矯正には、通常ワイヤーを使う事が多いのです。しかしインプラント矯正はワイヤーの他にネジのような部品で歯並びを固定します。
歯と歯茎と骨の部分を固定するため確実な矯正が望めるのはもちろん、矯正が完了したらこのネジは外れるため安全性も高いです。
インビザライン
インビザラインと呼ばれているマウスピースを使った矯正治療です
透明なマウスピースで歯を固定するため見た目にも矯正しているよ
歯科医師の判断によりますが、歯の機能としてではなく見た目などの整形外科的な理由から行う患者様も多いです。
こちらは健康保険が適用になりませんが、海外などではよく用いられる方法です。
MFT(口腔筋機能療法)
MFTとはOral Myofunctional Therapyの頭文字をとったもので、日本語では口腔筋機能療法(こうくうきんきのうりょうほう)と呼ばれています。
体の筋肉と同じように、歯も歯茎や舌、のどに筋肉が存在し、歯は筋肉に支えられて骨と結合しているため、これを鍛えるのです。
この方法は主に、子供に適用されます。
歯だけが丈夫でもその間にある筋肉が正常な位置に存在しないとかみ合わせに異常をきたしたり、歯ならびが悪くなったりします。
歯だけではなく噛んだり、飲んだり、舌や咽頭、唇などの器官の筋肉を強化していく治療で専門家の指導によって行う医療訓練です。
開咬の治療で不安があれば歯科医に相談
開咬といっても、状態は千差万別です。ここ近年食生活の変化に伴い多くの方が悩んでいる問題です。特に顎の骨をけずるのは簡単ではありません。
正常な歯並びがいかに大切かわかっていただけたと思います。特に幼少期は、早めに歯科医に相談していただくと、歯科矯正しやすいです。
なぜなら成長期の間は、筋肉が柔らかく矯正しやすいからです。大人になってから歯列矯正はできますが、固定するまでに時間もかかります。
長期治療ですが、インビザラインなどは社会生活を損なわずに治療できるため、どの方法が自分に一番適しているか歯科医に相談するのは重要です。
お子様の歯並びや、顎の状態は成長期のためもちろん変化していくものです。そのため、幼少時の定期健診はこまめにすることをお勧めします。
特に骨や歯の形成は一度固まってしまってからでは矯正するのが難しいです。永久歯が生え変わる前後に、お子さんの歯並びは大丈夫か気にかけておきましょう。
成長期途中であれば治療も早くてすみます。一度偏位した歯列はなかなか戻りません。
気になったら早めに矯正専門医院へご相談ください。(当クリニックでは外科矯正は行っていません)
まとめ
開咬が気になる方は、まずお気軽に歯科医師に相談することが一番の早道です。
歯並びが悪いと見た目に影響するだけではなく、呼吸や消化にも影響を及ぼします。外科的矯正などになると回復するまでに何年もかかるのです。
きれいな歯並びで健康でいるためにも、気が付いたら早めの受診をお勧めします。