矯正治療における7つのトラブル 治療期間、抜歯非抜歯、費用

1.治療期間に関するトラブル

当クリニックで行なう非抜歯矯正治療は約1年で治療が終了しますが、一般的な矯正治療では2~3年の治療期間がかかり、それがさらに長引くことによるトラブルをよく耳にします。
テレビの対談番組で当時矯正治療をしていた作家の林真理子さんが治療期間は3年位と言われたのに5年もかかったと述べられていました。

矯正の治療期間は厳密に何ヶ月と断言することは難しいにしても、患者様としても治療後の予定があることと思いますので、治療前にある程度は、はっきりしておかれることをお勧めします。

2.抜歯・非抜歯に関するトラブル

ほとんどの患者様は歯を抜かないでする矯正治療を望まれていますが、一旦は歯を抜かない約束で矯正治療を進めておきながら、治療途中で「やっぱり歯を抜かないと治療できないですね」とか「歯を抜かないと出っ歯になりますけどよろしいですか」と言われて、当クリニックに転院してこられる患者様が後を立ちません。

ホームページでは歯を抜かない矯正を勧めておきながら治療相談に行くと、結局抜歯矯正を勧められた」という苦情も多く耳にします。

治療相談だけなら被害も少ないでしょうが、一旦治療を始めてから、転院ということになると必ずトラブルになりますので、「歯を抜かないで矯正したい」ということを譲れない場合は治療前にその旨をしっかり告げられておくことをお勧めします。

3.抜歯矯正と法令線

Q.抜歯矯正をして、顔の法令線が目立つようになり、老けた顔になってきたのですが……

Ans.抜歯矯正をされた方からのお問い合わせで一番多いのが、顔の法令線が目立つようになってきたということです。
抜歯矯正の最大のメリットは、横から見た顔をE-Lineの中におさめることですので、上顎の骨格が内側に入っていきます。

そうなれば、横顔の口元は内側に入りますが、その結果正面から見た顔は、内側に入れば当然、法令線は目立つようになります
特に、もともとの歯並びのデコボコの程度が重度でない方が、抜歯矯正で前歯と上顎の骨格を大きく内側に入れれば、必要以上に皺のように老けたイメージを感じてしまう場合があります。

抜歯矯正によって横顔を大きく中に入れるということは、当然そのデメリットも考慮してご判断いただかなければ、あとで「こんなはずでは……」という結果にもなりかねません。

4.費用に関するトラブル

矯正治療は保険が適用されない為に高額な治療になってしまいます。
その料金体系もクリニックによって違っていて、特にトータルの金額が分かりにくい場合には、「言った、聞いていない」というトラブルになりやすくなります。

特に月々の調整料金がかかる医院では、患者様の立場からしますと、「わざと治療期間を延ばして、治療費を高くしようとしているのではないか」と疑心暗鬼になってしまうと、ドクターと患者様の信頼関係も崩れて泥沼の関係にもなりかねません。

治療する歯科医院としても治療費を高く感じて欲しくないので、できるだけ治療費を分けて料金説明をしたいのです。
この両者の立場の違いが後々、誤解を生じやすくするのです。
治療前にトータルでの治療金額をはっきりしておくことが金銭トラブルを防ぐ最善策になります。

5.治療結果の期待とのギャップによるトラブル

矯正治療においても、できることとできないことがあります。
歯科医師として、本来「出来ないことは出来ない」ときちんと言うべきなのですが、歯科医師が増えすぎて患者様を奪い合う現状では、患者様が少ない医院ほど、できないことでもできるような説明をしてしまい、後々トラブルになることが増えてきています。

本来医療とは、患者様が希望されて治療するものなのに、歯科医師の方が患者様を誘導したり、お願いして治療してもらう関係になってきているので、この治療結果と患者様のイメージのギャップのトラブルも年々増えてきています

6.増加する床矯正難民

最近の矯正相談でよくある相談が、長年床矯正をしているが、一向に治らないという相談です。
床矯正という治療は、入れ歯のような取り外し可能の矯正装置で、安く簡単に治療できるということで今ブームになりかけています。

この床矯正という治療方法自体に問題があるというのではなく、矯正治療の経験の少ない歯科医師が、何でもかんでも床矯正治療で治そうとするから、床矯正難民が急増しているのです。
私自身、この床矯正方法を自分の治療にも取り入れているので、この治療法の長所も短所も十分に把握していますが、決して全ての患者様に治療できる方法ではないのです。

床矯正治療法を行う場合には、患者様の適応症をきちんと選択しなければ大きなトラブルになってしまうのです。
多くの矯正専門医は、床矯正治療を邪道扱いしてワイヤー矯正よりワンランク下の治療のように思っているのは、こういう何でもかんでも床矯正で治療する姿勢に対してではないかと思います。

床矯正治療が今のような普及の仕方を続けていけば、床矯正治療=低レベルの治療という図式になりかねません
安い、簡単という理由だけで、治療を決断するのはどんなものかと考えさせられてしまいます。

患者様からのメール

36歳 男性

現在別の矯正歯科で、床矯正の治療を受けておりますが、治療が上手く行かないこともあり、最近は逆切れされることが多くなって参りました。
付きましては、セカンドオピニオンを頂戴したく、一度はお伺いしたいと考えております。宜しくお願い致します。

7.デメリットの説明不足によるトラブル

矯正治療というのは、歯や歯周組織に負荷をかけて歯を動かしていきますので、それに伴うデメリットも発生してきます。
それは歯医者の技術の問題である場合と不可抗力の場合とありますが、とにかくデメリットのリスクが存在していることは事実です。

患者様に「自分のクリニックで治療を受けてもらいたい」という気持ちが強くなると、「臭いものにフタ」をするようにデメリットの説明を省いてしまいます。
矯正治療をするかしないかの最終判断は患者様が下すことですから、歯科医師はその為の判断材料としてのメリットデメリットを客観的に知らせてあげる義務があります。

矯正のデメリット

1)歯槽骨(あごの骨)が減少する

歯を動かすことにより、土台であるアゴの骨にも負担はかかりますので、歯槽骨が少しは減ってきます。
多くの場合、それが歯の寿命を短くしたり、問題が生じたりする類いのものではありませんが、歯の部分によっては、少しは食べ物が詰まりやすくなることもありますが、大抵の場合は気になる程のことではありません。

2)歯茎の退縮

1とも関係しますが、歯槽骨が減少すれば、それに伴い歯茎も痩せてくることもありますが、歯槽骨の厚みには個人差があり、ほとんどの場合には目に見えたような歯茎の退縮はないものですが、特に前歯の歯槽骨が薄い場合には前歯の歯茎が退縮する可能性があります。

3)歯根の吸収

硬い骨の中で硬い歯を動かしていきますので、1の歯槽骨が吸収していくのと同じように、歯根にも吸収が生じる可能性があります。

4)歯髄の切断

歯を動かしていく際に、歯の中の神経が歯の動きについていけない場合に、その歯の神経が死んでしまう場合があります。
奥歯は大きく動かすことは難しいので、歯髄が切断されることは少ないですが、前歯で移動量が大きな場合や、成人で歯髄が細い場合などには、歯髄切断が生じることがまれにあります。

矯正治療には、上記のようなデメリットの可能性もあり、メリットばかりではないことを十分考えられた上で、矯正治療をされるかどうかをご判断下さい

一般的に言いまして、上記のデメリットの低い可能性に比べれば、治療後の多くのメリットの方が断然多く、治療後には多くの患者様が喜ばれ、矯正して良かったと感じられることとは思いますが、あまりにも過度な期待をされていたり、一切のデメリットを受け入れられない患者様には、矯正治療に対して、再度考え直されることをお勧めいたします。

矯正治療は途中で治療を中止したり、転院することが難しいので、治療を決断される前に十分ご注意下さい。

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