【監修:青山健一】
目 次
子どものお口の中で気になることはありませんか?
「テレビを見ているとき口がぽかんとあいている」、「かみ合わせが気になる」などの気になる症状が「プレオルソ」で治るかもしれません。
プレオルソとは、80年以上も前から使用されている「機能的顎矯正装置」をベースに、現役の矯正専門医により開発された新素材の「マウスピース型矯正装置」のことです。
永久歯に生え変わる前の、骨の柔らかい時期に始めることで高い効果が期待できます。
家にいるときと寝ているときの数時間つけておくだけでよいため、子どもへの負担が少ないのが魅力のひとつです。
また、取り外しが可能で学校に行く際に自宅に置いていくこともできるため、見た目を気にすることもありません。
プレオルソの適用年齢
プレオルソは、あごの骨が成長する過程で使う矯正装置です。
そのため、3歳から10歳までの骨の柔らかい時期が適用年齢となりますが、歯がある程度生え揃う5歳から6歳ごろに始めるのがベストなタイミングといわれています。
永久歯が生え揃うまでに始めるのがポイントで、永久歯が生え揃ってしまう12歳以降だと効果が薄く、失敗する可能性が高くなってしまいます。
また、あごの骨の成長が止まっている成人には効果が期待できません。
プレオルソで治療できる症状
プレオルソを使った矯正治療では下記のような効果が期待できます。
- 叢生(歯並びががたがたの状態)の改善
- 上顎前突(上の歯が前に出ている状態)の改善
- 反対咬合(下の歯が上の歯より前に出ている状態)の改善
- お口がぽかんとあいている
- 口呼吸から鼻呼吸へ
- 舌のトレーニングによる正しい嚥下と発音
プレオルソはただのマウスピース型矯正装置ではなく、いろいろなお口の問題の改善が期待できる、子どもを健康な体へ導ける矯正装置なのです。
ほかにも、いびきにも効果的であることがわかっており、プレオルソを使用している子どものうち約6割に改善の効果があったとされています。
プレオルソが失敗する原因は?
いろいろなお口の問題に対応できるプレオルソですが、やはり失敗もあります。
その原因として主に3つのことがあげられます。
症状が重度である
プレオルソはマウスピース型の矯正装置です。
装置をお口の中に入れるのが大前提の治療方法になるため、装置が入らないほどの重度の症例には適していません。
その場合、別の装置でプレオルソが入るまで歯を動かすことで使うことができますが、別途費用がかかってしまうことが多いため難しい問題といえます。
永久歯が生え揃っている
前述のように、プレオルソはあごの骨の成長を利用した矯正方法です。
永久歯が生え揃う12歳頃にはあごの骨が固くなってしまい、歯を動かすのが難しくなってしまうため、骨の柔らかい10歳ごろまでが効果のでる限界といえます。
しかし、生え変わりには個人差もあるため、気になったら早めに歯科医院に相談に行くことがおすすめです。
マウスピースの装着時間が短い
プレオルソの失敗の原因でもっとも多いのが、装着時間が短いことです。
自分で取り外しが可能なため、痛みや気持ち悪さから子どもが装置を入れるのを嫌がってしまうことが多くあります。
装置を入れる時間が短くなってしまうと本来の効果が得られず、失敗する確率が高くなってしまいます。
寝ている間は必ず装置を入れるようにし、起きている間も数時間は入れるのが一番効果的な装着時間です。
痛みが原因の場合は、装置を調整することで解決できることが多いため、早めに歯科医院に相談しましょう。
プレオルソを成功させるコツ
せっかく矯正治療を始めるのであれば、できるだけ満足のいく結果にしたいと思います。
そのためにも大事なことがいくつかあるため、詳しくご紹介します。
装着時間を守る
プレオルソは基本的に夜間、寝ている間につける装置ですが、起きている間の装着時間もとても大切です。
寝ている間+家にいる間(起きている間)の数時間は装置を入れておくことをおすすめします。
起きている間の装着時間が短いと、寝ている間に体が異物だと判断して、装置を口の外に出してしまうことが多くなります。
結果的に装着時間が短くなってしまい、失敗の原因にもなるため起きている間でも最低1時間は装置を入れ、体を装置に慣れさせておきましょう。
また、装着時に口を閉じ鼻呼吸で使用することで、口呼吸から鼻呼吸への改善が期待できます。
さらに、口を閉じることで矯正の力が働き、お口まわりの筋肉のトレーニングにもなります。
歯磨き後に装着する
マウスピース型の矯正装置は長時間入れることで効果を発揮できますが、このとき歯が汚れていたり細菌が残っていたりすると、虫歯のリスクが上がってしまいます。
せっかく歯並びが改善されても、虫歯ができて歯がボロボロになってしまうのはもったいないです。
装着前や寝る前にはしっかり歯をみがいてから装置を入れるようにしましょう。
装着時に会話する
プレオルソは矯正装置としても優秀ですが、同時にお口の機能訓練装置でもあります。
装着時に会話をすることで舌のトレーニングになったり、装着時に唾液を飲み込むことで舌の正しい位置を覚え、正しいしゃべり方を身につけたりもできます。
また、お口まわりの筋肉のトレーニングには「あいうべ体操」というものもおすすめです。
あいうべ体操とは、福岡県にあるみらいクリニックの今井一章院長が考案された体操です。
その名の通り「あ・い・う」と大きく口を動かした後「べー」と舌を思い切り出す体操で、これを行うことによりお口まわりの筋肉が動かされ、ぽかんとお口があいているのを改善できます。
また、口を閉じられるようになることで口呼吸から鼻呼吸への改善といった効果も期待できます。
就寝時はテープを使用
装置が外に出るのを防ぐため、就寝時は必ず唇にテープを貼って使うようにしましょう。
テープはドラッグストアや通販でも買えるお肌に優しいタイプのものがおすすめですが、サージカルテープや、代用品として絆創膏なども使えます。
毎日使うもののため、お肌に合ったものを選ぶようにしましょう。
テープは鼻の下まん中あたりから上下の唇を固定するように縦に1枚貼るか、外れやすい場合は×印のような形で貼るのがおすすめです。
また、テープを張る際には、上下の唇を少しだけ内側に入れて貼るようにしましょう。
プレオルソの治療では歯科医選びも大切
プレオルソは講習会を受講した歯科医師だけが治療に使える矯正装置です。
プレオルソのホームページに取り扱い医院が掲載されているほか、掲載されていなくても講習会を受講して治療可能な歯科医院もあるため、まずは電話などで問い合わせてみるのがよいです。
矯正治療は費用も高く、期間も年単位でかかるため
- 通いやすい医院であること
- 担当する歯科医師との相性
なども考えたうえで歯科医院を選ぶのも大切です。
子どもの歯科医選びのポイント
子どもの体を預ける、というと大げさかもしれませんが、お口の中というのはそれほど大切です。
体の預け先である歯科医院を選ぶ際のポイントはいくつかありますが、今回は矯正歯科を選ぶポイントをいくつか紹介していきます。
設備が充実している
子どもを歯科医院に通わせるのにある意味一番大変なのが、「連れていく」ことだと思います。
歯科医院に対し、「怖い・痛い」といった恐怖心がある子どもは少なくありません。
キッズスペースがあるなど、子どもの落ち着ける雰囲気のある歯科医院だと恐怖心もやわらぎ、通いやすいですよね。
複数の治療方法が選べる
そもそも矯正にはⅠ期治療とⅡ期治療があり、プレオルソはⅠ期治療にあたります。
矯正方法はプレオルソ以外にも、床矯正やワイヤー矯正などいろいろあるため、複数の治療方法を提示してくれる歯科医院を選ぶのがよいです。
年齢や歯並びの状態、Ⅰ期治療で終わらなかった場合の矯正方法など、きちんと説明を受け納得したうえで治療方法を選ぶようにしましょう。
矯正治療にどこまで求めるのか、ご家庭の経済状況や子どものやる気などで選択肢も変わってくるため、複数の治療方法が選べるというのはかなり重要です。
また、ホームページなどで歯科医師が矯正認定医または専門医であるかどうかも確認するポイントです。
治療前の説明が丁寧
矯正治療の相談に行った際に、診療システムや抜歯の可能性の有無、費用など検査をしなくてもわかる範囲で説明してくれる医院をおすすめします。
さらに、その後の診察でレントゲン撮影や歯の模型などの診断に必要な資料を集め、治療方針を詳しく丁寧に説明してくれる医院であればなおさらよいです。
歯科治療に関する知識のない保護者の方にもわかりやすく、納得のできる説明をしてもらえるかが大切です。
また、治療の説明や内容に納得のいっていない状態で始める自費治療は、その後トラブルになる可能性が高いため十分に注意してください。
プレオルソを成功させたいなら
プレオルソを成功させたいなら、
- 装着時間
- 舌トレーニングやお口まわりの筋肉トレーニング
- 歯科医院とご家庭の連携
がとても大切です。
ここまででご説明した通り、プレオルソは装置を正しい入れ方で長い時間入れることで成功の確率が上がります。
ただし、プレオルソは100%の矯正治療ではなく、80%程度を目指す治療方法となります。
完璧な歯並びにすることは、プレオルソだけでは難しいです。
そのため、プレオルソを入れることでどこまで改善できるかの説明を事前に聞き、納得している状態で始めるのがよいです。
また、取り外しが可能ということで、子どもと保護者の方、双方のやる気がなければ難しい治療方法でもあります。
親子と歯科医師、二人三脚ならぬ三人四脚でがんばることが大切です。
まとめ
プレオルソは装置を入れることに慣れてしまえば、さまざまなお口の問題への効果が期待できる矯正方法です。
歯並びやかみ合わせの改善だけでなく、口呼吸から鼻呼吸への改善やお口まわりの筋肉や舌のトレーニング効果もあり、さらにいびきの改善にも効果的だと言われています。
通常の矯正より費用も抑えられますし、期待した効果が得られずⅡ期治療に移行した際でもワイヤー矯正などででる痛みが通常よりも軽減され、期間が短くなるメリットもあります。
取り外しが可能なため子どものやる気に頼る部分もありますが、柔らかい素材でできているため不快感も少なく、体が慣れてしまえば装置を長時間入れておくことも難しくありません。
子どもの歯並びやかみ合わせ、お口まわりが気になる方は一度相談してみてはいかがでしょうか。