【監修:青山健一】
目 次
歯列矯正にはさまざまな方法がありますが、なかには外科的手術を用いて歯並びや噛み合わせを改善する方法もあります。
サージェリーファーストは、外科的手術を併用する矯正治療のひとつです。外科手術と聞くと、怖い・痛いなどのイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、一般的な歯列矯正では治療できない症状の改善が期待できるなどのメリットもあります。今回は、サージェリーファーストについて詳しく解説いたします。
サージェリーファーストの概要
サージェリーファーストは、外科的手術を併用する新しい外科矯正方法です。
はじめに手術を行い、骨格のズレや位置を改善します。そのうえで噛み合わせの治療をすることで、治療期間を大幅に短縮することが可能です。
また、顎変形症など骨格の状態によっては、一般的な矯正治療では理想の歯並びや外見の変化が得られない場合があります。
サージェリーファーストは、一般的な矯正治療では改善できない症状の改善ができる治療方法のひとつです。
サージェリーファーストのメリット
外科的手術を併用する歯列矯正には、怖い・痛いなどのネガティブなイメージがあるかもしれません。
しかし、それ以上に大きなメリットがあります。サージェリーファーストのメリットについて理解を深めましょう。
治療期間を短縮できる
サージェリーファーストの最大のメリットは、治療期間を短縮できるという点です。
まずはじめに手術で骨格の問題を改善するため、通常の歯列矯正よりも治療期間が短くなります。
外科手術の後は一時的に噛めない状態になりますが、この噛めない状態の期間が歯の移動効率を高めます。
個人差はありますが、一般的な歯列矯正の治療期間と比べると約1/4~1/2まで治療期間を短縮することが可能です。
見た目を先に治せる
サージェリーファーストは、まずはじめに手術で骨格の問題を改善します。そのため、見た目の変化をすぐに感じられます。
従来の外科矯正では手術の前に事前矯正を行うことがほとんどです。そのため、外見の変化が得られない期間がどうしても長くなります。
歯並びや噛み合わせを治療する人の多くは、見た目になんらかのコンプレックスを抱えています。
だからこそ、外見を早く治したいと思うのは当然のことです。治療を始めたのに見た目の変化がなかなか見られないのは大きなストレスになります。
見た目を先に治し、その後に噛み合わせや歯並びを改善するサージェリーファーストは、患者様の治療のモチベーション維持にもつながる治療方法です。
サージェリーファーストのデメリット
顎変形症など骨格的な問題や見た目のコンプレックスを抱える人にとって、サージェリーファーストはメリットの高い治療方法です。
しかし、メリットだけではなくデメリットもあります。
サージェリーファーストを検討するうえで知っておきたいデメリットについてもチェックしておきましょう。
手術後の噛み合わせが不安定になる
サージェリーファーストは手術後、噛み合わせが不安定になります。そのため、スプリントと呼ばれるマウスピースの装着が必要です。
噛み合わせの不安定な状態が約3~4ヶ月続くことは覚えておきましょう。よく噛めないために、食事に苦労する可能性もあります。
治療費が高い
外科的手術を併用するサージェリーファーストは、治療費が高額です。また、保険適用外の治療方法となります。
外科手術・術後矯正・装置代・入院費など全て含めると、約200~300万円の治療費となる場合が多いです。
治療費な高額な治療方法ですし、自費診療となるため治療するクリニックによって治療費は大きく異なります。
矯正費用と手術費を分けているクリニックもあるため、必ず治療にかかる総額を確認しましょう。
治療を受けられる医院が少ない
サージェリーファーストは、まだ新しい外科矯正の治療方法です。また、高度な技術が必要とされる治療方法でもあります。
そのため、サージェリーファーストの治療を受けられる医院はまだ少なく、どこでも治療できるわけではありません。
お住まいによっては定期的な通院が大変な点もデメリットといえます。
サージェリーファーストが適用できる症例
サージェリーファーストは、あらゆる症例に適用している治療方法というわけではありません。
骨格の問題が大きい不正咬合に対して適用となります。具体的にどんな症例が適用となるのか解説いたします。
受け口
いわゆる受け口である下顎前突症は、サージェリーファースト適用となる症例のひとつです。
下顎が長い・前に出ているなど、下顎の問題によって前歯の噛み合わせが逆になると受け口になります。
受け口は一般的な歯列矯正で治療できる場合もありますが、下顎の問題が大きい場合はサージェリーファーストが適用となります。
出っ歯
出っ歯は、日本人に多い不正咬合のひとつです。
出っ歯でも、歯の生え方や歯の大きさが出っ歯の原因となっている場合は、一般的な歯列矯正で改善できます。
しかし、上顎が前に出ている・上顎下顎の骨格によって口元が前に出ているなど、骨格が原因の出っ歯の場合は、サージェリーファーストが適用となります。
ガミースマイル
笑ったり口を開けたりした際に歯茎が見えるガミースマイルの原因はさまざまです。
上顎が大きい・上顎の骨が長い・下顎が小さいなど、骨格が原因でガミースマイルが生じている場合もあります。
ガミースマイルの原因が骨格の問題の場合は、サージェリーファーストでの治療が可能です。
また、顎が前方に出ているために前歯や歯茎が目立ちやすくなるケースもあります。
骨格により出っ歯とガミースマイルが両方生じている場合もサージェリーファーストの適用となります。
サージェリーファーストが適用となるかどうか気になる方は、専門医に相談してみましょう。
サージェリーファーストによる矯正治療の流れ
どのような流れで治療していくのか、治療内容が気になる人も多いはずです。
サージェリーファーストによる矯正治療の流れについても把握しておきましょう。
診察・レントゲン撮影
サージェリーファーストは、骨格の問題が大きい症状に対して適用となる治療方法です。
そのため、骨格の状態や問題点をしっかり把握することが重要となります。
まず、患者様がどんな問題や不都合を感じているのかしっかり診察し、レントゲン撮影で骨格や歯並びの状態を細かく検査します。
手術の実施
矯正治療の前に手術を実施するのが、サージェリーファーストの特徴です。外科手術で骨格の問題を改善します。
手術方法は症例によって異なり、症例に合わせた手術方法で顎の骨を短くしたり顎の骨の位置を改善したりしていきます。
また、手術準備として手術前に矯正装置やワイヤーを装着する場合も多いです。これは、手術後の顎の骨の位置を安定させるための補助として行います。
矯正治療の実施
手術後は、顎の骨の問題は改善された状態ですが、噛み合わせや歯並びはまだ改善されていない状態です。
矯正治療によって、噛み合わせや歯並びを改善していきます。その際の矯正方法はさまざまですが、ワイヤー矯正が一般的です。
矯正治療の治療期間は、歯並びの状態によって異なります。治療期間は早い人で約半年、長い人で約1年半です。
矯正治療が完了したら、骨や歯並びの後戻りを防ぐために約1~2年ほど保定します。
サージェリーファーストによる矯正治療の注意点
サージェリーファーストは、骨格の問題によって生じる噛み合わせや見た目のコンプレックスを改善できる治療方法です。
メリットがある一方で外科手術を行うため治療費が高額になりやすい・入院が必要になるなどのデメリットもあります。
また、外科手術ならではのリスクも注意点として挙げられます。
- 術後の知覚障害
- 神経・血管損傷のリスク
- 合併症のリスク
- 術後の腫れ・むくみ・内出血
このようなリスクも予め理解しておきましょう。知覚障害や感覚麻痺は、大半の方が約3ヶ月~10ヶ月で回復します。
また、神経・血管損傷・合併症は必ずしも起こるものではありませんし、極めて稀な症例です。
しかし、起きる可能性がゼロではない以上、施術のリスクとして理解しておくことが大切です。
一般的な歯列矯正とは異なるリスクや注意点があることをしっかり理解したうえで、治療を行うか検討しましょう。
短期間で矯正治療を終えたいなら歯科医に相談
サージェリーファーストは、見た目のコンプレックスを早期に改善し、治療期間を短縮できる治療方法です。
そのため、「短い期間で治療を終わらせたい」「見た目の問題を早く治したい」という方に適しています。
ただし、適用となる症例は限られていますし、メリット・デメリットをしっかり理解したうえで治療を始めることが大切です。
治療期間を短くする方法は、サージェリーファーストだけではありません。
短期間で矯正治療を終わらせるベストな方法は、患者様によってひとりひとり異なります。
まとめ
従来の矯正治療では改善が難しかった症例も、サージェリーファーストをはじめとする新しい治療方法によって治療が可能となりました。
これまでに骨格の問題で噛み合わせ改善を諦めていた方も、外科矯正を視野に入れることで理想の歯並びを手に入れられる可能性があります。
歯並びや見た目のコンプレックスが改善するだけで、毎日の生活は大きく変わります。
骨格や噛み合わせのコンプレックスを抱えている方は、ひとりで悩まずにコンプレックスを乗り越える方法を一緒に考えていきましょう。