顎変形症は治療後に後戻りするのか解説|外科的矯正治療の流れや後戻りの原因もご紹介します

【監修:青山健一】

顎変形症は治療後に後戻りするのか解説|外科的矯正治療の流れや後戻りの原因もご紹介します

顎変形症(がくへんけいしょう)とは読んで字のごとく、上顎や下顎など顎(あご)の骨がゆがむことで、かみ合わせの不具合や顔の変形をきたす症状を総称したものです。

症状の改善には矯正治療や手術をともなう外科矯正が必要ですが、残念ながらせっかく時間や費用をかけて治療をおこなっても後戻りしてしまう例がしばしばみられます。

そもそも顎変形症は何がトリガーとなり、どのような治療が適切なのか?そして何故後戻りが起きてしまうのか?その原因を検証すると共に詳しく解説します。

顎変形症は治療後に後戻りするのか?

 

顎変形症は治療後に後戻りするのか?

顎変形症は軽度であれば歯科矯正治療のみで改善できますが、変形の度合が進めば骨切り術という外科手術治療を併用するケースが選択されます。

外科手術を併用した治療に要する期間は精密検査から診断・説明まで約2~3週間、手術の説明・臨床検査を経て術前矯正に約数か月~1年半かかります。

そして約10日前後の手術を終えると術後矯正が長くて約1年半、術後の後戻りを防ぐための保定でもおよそ1年半と膨大な時間を費やさねばなりません。
このように工程と時間をかけても治療後に後戻りするケースは見受けられるため、その事象が起こる原因や予防する方法をご紹介します。

顎変形症の概要

顎変形症の概要

上顎・下顎で骨の位置がずれていたり、大きさやバランスが乱れていたりすることでかみ合わせの不具合や顔の左右非対称などの症状をきたした状態を総称して顎関節症とよびます。

かみ合わせの問題から起こる下顎前突症(受け口)・小下顎症(下顎の後退)・上顎前突症(出っ歯)・開咬症(オープンバイト)など、いわゆる不正咬合は顎変形症の代表例です。

顎変形症の特徴

顎変形症に罹患することであわられる特徴は、まずかみ合わせの不具合から不正咬合を生じ顎関節に痛みを感じたり、口が開かなかったりと顎関節症と類似した症状が見受けられます。

顎変形症にもいくつかタイプが存在し上顎・下顎そして顔全体にゆがみが生じているもので見分けられますが、どのタイプに属するかは自己判断せず歯科医師の判断を仰ぎましょう。

前歯がかみ合わない開咬のため麺類などが噛み切れない・他の食べ物も飲み込みにくい・発音がしづらいなど嚥下力や発声に影響を及ぼす場合もあります。

見た目における特徴は、出っ歯や受け口または顔が変形し左右非対称になるなどバランスを欠いた状態になりますが、これも不正咬合によるものです。

主な原因

要因としては生まれつき上口唇が割れている口唇口蓋裂など先天性のものと、顎の骨折などによる後天性のものがあり、いずれも上下の顎の骨の大きさや形・バランスの異常を伴います。
指しゃぶりや口呼吸・舌癖も要因といわれていますが、顎変形症をきたす原因は現状そのほとんどが不明なままです。

顎変形症の治療方法

顎変形症の治療方法

本来歯科矯正治療は自由診療になりますが、顎変形症の診断が下り認定をうけた口腔外科施設で外科手術が必要とされるケースは健康保険が適用されます。
治療費の相場は外科手術であれば下顎のみは約30~35万円、上顎・下顎両方だと約40~50万円程度です。

症状により異なるものの、手術費用や入院費に関しては高額療養費制度の対象になれば治療費が一部払い戻されるため、申請の手続きは必ずおこないましょう。

歯列矯正のみ

症状が比較的軽度あるいは永久歯が生えそろっていない成長期のお子さんは、マルチブラケットやマウスピースなどの装置を用いた歯科矯正治療で症状の改善が可能です。
治療費は装着期間に用いるブラケットやマウスピースにより多少の差はあるものの、健康保険適用でおよそ25万円程度となります。

顎のずれが著しいケースで不正咬合があり、食べものが咀嚼しにくいなど不都合が生じる場合や成人は、矯正治療と外科手術を併用し骨格の改善を図る治療法が適しています。

外科的矯正治療

不正咬合など歯並びだけでなく、上顎・下顎の骨の位置がずれ骨格自体に影響をおよぼしている場合は矯正治療のみでは改善されないため、外科手術による治療をおこないます。

外科矯正ともよばれる手術はおよそ10日前後の入院を必要とし、全身麻酔をする大掛かりなものになるため患者さんにとって時間や身体的負担が大きいことがネックです。

外科的矯正治療の流れと期間の目安

外科的矯正治療の流れと期間の目安

治療は矯正治療および顎の手術を組み合わせておこない、下記の術前矯正・手術・術後矯正・保定の4段階を踏む必要があり、期間にすると3年程度かかります。
下記では外科的矯正治療について流れと代表的な手術方法、そして治療に要する期間について詳しくご説明します。

術前矯正

口腔外科での手術の前に、本来の上顎・下顎の位置や形状にあわせた歯並びを改善するため、矯正歯科でブラケットやバンドを口腔内に装着する術前矯正をおこないます。
この矯正治療期間は患者さんの状況・症状により差がありますが、およそ数か月~1年半程です。

手術

手術

術前にはレントゲンやCT検査、かみ合わせの型取りから全身麻酔のため場合によっては麻酔科の診察など、さまざまな診断を受ける必要があります。

手術には症状の進行度と上顎前突症や左右非対称など状況により適用される手法が異なりますが、手術方法はおおむね下記5種類から選択・適用されます。

【代表的な手術法】

  1. 前方歯槽骨切り術:奥歯を1本抜歯、歯茎を骨ごと切り離し前歯を適切な位置に調節。
  2. LeFort 1型骨切り術:上の歯茎・骨を切り、上顎全体を正しい位置に動かす。
  3. 下顎枝失状分割法:下顎の歯茎を切り、下顎全体を移動させかみ合わせを調整。
  4. 下顎枝垂直骨切り術:顎関節前の骨を垂直に切り、下顎全体を動かしかみ合わせを調整。
  5. オトガイ形成術:1~4と併用。下唇裏の歯茎を切り、下顎先端の形を整える。

術後矯正

術後は前顎・下顎前突症や顔のゆがみなど症状により異なってきますが、かみ合わせを調整・安定させるためマルチブラケット装置などを用いた治療を開始します。

治療期間は平均1年程度ですが、術後1年間は手術を施した顎の骨が元に戻ろうとする力が働くため、月に1回程度の通院による注意深い経過観察が必要です。

保定

保定

 

上記すべての治療後にマルチブラケット装置を外し、後戻り防止のためにリテーナーとよばれる保定装置を使用して歯並びの安定・維持をおこないます。
装着期間はおよそ3年程ですが2~3か月ごとに通院し、かみ合わせの具合をみてもらう必要があります。

顎変形症の治療後に後戻りする原因

顎変形症の治療後に後戻りする原因

患者さんにとってあらゆる面で負担の大きい治療を受けても、不完全で適切でない治療計画や不十分なケアで残念ながら元の状態に後戻りするケースもままあります。
治療後に後戻りを起こす主要な原因としては下記の3つが考えられます。

保定装置を装着していなかった

1つ目は治療後にリテーナーとよばれ、治療で動かした歯をキープさせる働きをもつ保定装置を正しく装着しなかったことによるものです。
歯のまわりの骨や歯肉がきちんとしっかり固まるには3~4年もの時間を要しますが、この間に歯が治療前の状態に戻ろうとする力が強くなることで後戻りが起こります。

骨が安定しないうちにリテーナーを外してしまえば当然元に戻る力が働くため、後戻り防止には日中そして夜間とできるだけ長い時間装着することが必要です。

舌癖や口呼吸などの習慣

2つ目は舌が下がるなど本来あるべき位置にないことにより、舌の先が常に下側の前歯を押すいわゆる舌癖で下顎前突(受け口)を引き起こすものです。
また乳幼児期にみられる指しゃぶりや耳鼻科系疾患による口呼吸の習慣も顎の成長を妨げ、顎変形症の発生要因になります。

顎の骨の成長

顎の骨の成長

顎の骨も乳歯が永久歯に生え変わり、また身長が伸びるように成人まで成長します。
ただし顎に関してはさまざまな刺激を受け成長する特殊な一面もあり、ときに成長不全も起こします。

治療をおこなったとしても、舌癖など悪い口腔習癖が改善されなければ顎に刺激が与えられたままになり、顎の骨が大きく成長することで後戻りの原因につながるため注意が必要です。
後戻りの原因となる要素は専門の歯科医師の適切な診断と指導を受け、きちんと改善しケアしていくことが重要となります。

後戻りを予防する方法

後戻りを予防する方法

時間と費用をかけておこなった治療後の状態を保ち、後戻りを防ぐにはまずお口まわりの筋トレであるMFT(ORAL MYOFUNCTIONAL THERAPY)とよばれる口腔筋機能療法を実施することが有効です。

MFTは口腔筋や舌を鍛えることで乱れたバランスを改善し、口腔内の正しい機能を得るために必要不可欠なトレーニングです。
MFTを毎日おこなうことで、舌先が本来あるべき正しい位置になる・かむ力を取り戻す・フェイスラインが整うなど多くのメリットが得られます。

舌を上に持ち上げるポッピングや、嚥下力を強めるためのスラープアンドスワローなどインターネット上でも紹介されていますが、自己流に頼らずきちんと指導を受けてから実施しましょう。

顎変形症の治療の不安は歯科医に相談しよう

顎変形症の治療の不安は歯科医に相談しよう

ご自分の口腔内の状態や症状を正しく認識し、最良な治療を受けて治療後も後戻りの無いようケアしていくには何より信頼できる専門の歯科医に相談し、適切な診断を受けて治療を開始していくことが肝心です。
不調を抱えたまま悩み続けるより、まずは外科矯正専門の歯科医師へ相談しましょう。

まとめ

まとめ

外科手術を併用した矯正治療は、患者さんにとって時間や費用そして体への負担の面も大きく、回避することができれば一番です。
しかし何より重要なのは、さまざまな原因にきちんと対応し改善できる最良な治療を受け、後戻りのないようケアしていくことが肝心です。

顎変形症はご自身のQOL(Quality of Life=生活の質)を大きく損ないます。
まずは信頼できる外科矯正できる歯科医師の正確で適切な診断を仰ぎ、ご自身に合った治療を選択しましょう。




監修者:銀座青山You矯正歯科グループ 理事長・総院長 青山健一

理事長・総院長 青山健一 1965年 広島県呉市生まれ
1990年 広島大学歯学部卒業
1992年 南青山デンタルクリニック開院
2001年 医療法人社団 健青会 設立
2011年 日本で初めての「部分矯正専門医院」のYou矯正歯科を開設
2021年 You矯正歯科 池袋西口医院開設
2021年 You矯正歯科 広島紙屋町医院開設(銀座、青山等で9医院開院中)
▼総院長ブログ「幸せってなぁに?」もご覧ください。

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